【現役獣医が解説】犬・猫の輸血とは何をしている治療?
貧血で輸血が
必要と言われたときに知っておきたい基礎知識
貧血が進んでいます。
「輸血を考えましょう」と言われました

輸血って…
命に関わる状態なんですか?

輸血は最後の手段ではありません。
命を守るための
時間を作る治療です。

貧血と聞くと、
- 血が失われている
- 血が壊れている
そんなイメージを持つ方が多いと思います。
そしてそこに
「輸血」という言葉が重なると、
不安は一気に大きくなりますよね。
でも実は輸血は、
病気そのものを治す治療ではありません。
体を立て直し、
原因と闘うための時間を作る治療です。
まずは全体像から整理していきましょう。
- 輸血は血液成分を補う治療
- 目的は酸素供給の回復
- 輸血は病気を治す治療ではない
- 原因治療へ繋ぐ時間を作る
輸血治療とは?
赤血球の役割は酸素を運ぶこと。
肺で受け取った酸素を
全身へ届けています。
貧血になると、酸素が足りない。
すると体は
- 心拍数を上げ
- 呼吸を増やし
- 血流を大切な臓器へ集中
必死に代償します。
でも限界を超えると
- 元気消失
- 呼吸促迫
- 虚脱(ぐったり)
命に関わる状態へ進行。
そこで輸血をすることで
不足した赤血球を補い、
酸素を運ぶ力を回復させます。
つまり輸血とは、
酸素供給を立て直す治療です。

輸血=治療のゴールではない
ここがとても重要。
- 免疫介在性溶血
- 慢性腎臓病
- 骨髄疾患
- 腫瘍
原因が続けば
再び貧血になります。
輸血は、
貧血を治す治療ではありません。
失われた赤血球を補い、
体を安定させる治療です。
そしてもう一つ大切な意味があります。
輸血は、
命のバトンをつなぐ治療
原因と闘う時間を作り、
次の治療へ命をつなぎます。
- 検査
- 原因治療
- 回復
ここへつなぎます。
今の状態を乗り越えるための、
大切な一歩になります。

どんなときに輸血が必要?
判断は数値だけではありません。
(トリガー値)
- ヘマトクリット値(Ht)
- ヘモグロビン濃度(Hgb)
それに追加で
進行速度、臨床症状を加味します。
- Ht 15〜20%以下
(急性か慢性で異なる) - 症状あり
ただし大切なのは数字より状態です。
安全に行うための準備
輸血で最も怖いのは不適合輸血。
そのため事前に
- 血液型判定
- クロスマッチ
適合性を確認します。
ここを徹底することで
輸血の安全性は大きく高まります。

血液型が合えば安全?
血液型の確認は、
人でいう「成分表示の確認」のようなもの。
大枠で危険が少ないかは分かります。
でも成分が安全でも、
体質によって反応が起きることがあるように、
血液型が合っていても
体が拒否反応を起こすことがあります。
だから輸血ではもう一段階、
血液同士を合わせて反応が起きないかを確認します。
それがクロスマッチです。

輸血の流れ
健康で体格の十分な子が対象になります。
適合しない場合は、
他のドナーを探します。
フィルターを通し、
血栓や凝集塊を除去します。
特にゆっくり投与します。
- 輸血反応が無いか確認
-
- 見た目の様子
- 体温
- 心拍数
- 呼吸数
- 血圧
体調や必要量、時間に合わせて行う
- 投与速度
-
速すぎると
- 心負荷
- 肺水腫
- 循環過負荷
慎重に投与します。
私の血を輸血することはできますか?
「もし必要なら、私の血を使ってください」

そう言ってくださる飼い主さんも少なくありません。
それだけ大切に思っている証だと思います。
そのお気持ちだけで、
どれだけ大切に思われているかが伝わります。
ただ結論から言うと、人の血液を
犬や猫へ輸血することはできません。
血液型の仕組みがまったく異なり、
- 強い免疫反応
- 溶血反応
が起きてしまうため、
安全に輸血を行うことができません。
お気持ちはとても尊いものですが、
医学的には実施できないことを
ご理解いただければと思います。
輸血中に見るポイント
輸血前の適合試験が問題なくても
途中で体調に変化が見られる場合があります。
- 体温
- 呼吸
- 心拍
- 粘膜色
- 元気
異常があれば即中止です。
輸血の副反応
発生率は高くありませんが、
ゼロではありません。
- 発熱
- 嘔吐
- 顔面浮腫(ムーンフェイス)
- 蕁麻疹
- 溶血反応(血液または尿)
- 循環過負荷
多くは早期発見・早期対応が可能です。
落ち着いて症状を確認したら
病院へ連絡し、
指示を仰いでください。

飼い主さんへ
輸血と聞くと、
- 怖い
- 危険
- 最後の手段
でも実際には
- 血液型確認
- 適合試験
- 速度管理
- 全身状態の確認
安全対策を重ねて行います。
輸血は最後の手段ではありません。
命をつなぐための大切な橋渡しになります。
焦らず、
いま何が起きているのかを理解し、
主治医と一緒に方針を考えていきましょう。
よくある質問
- 輸血はどれくらい危険な治療ですか?
-
輸血と聞くと
「危険」「命に関わる」と感じる方も多いと思います。
たしかに副反応のリスクはゼロではありません。ただし実際には、安全確認を徹底して行います。
適切に管理された輸血は、
命を守るための非常に大切な治療です。
- 輸血をすれば貧血は治りますか?
-
輸血は、貧血そのものを治す治療ではありません。
不足した赤血球を補い、
体を安定させる対症療法です。原因疾患が続いていれば、
再び貧血になる可能性があります。そのため輸血と並行して、
原因治療が最も重要になります。
- 輸血後すぐ元気になりますか?
-
貧血の症状は改善する事が想定されます。
- 呼吸の落ち着き
- 元気の回復
- 食欲改善
といった変化が見られます。
ただしこれは、
体が安定したことによる改善。
病気が治ったわけではありません。
- 何回も輸血はできますか?
-
可能です。
ただし回数を重ねると、- 抗体産生
- 溶血反応
のリスクが上がります。
そのため2回目以降は、
より厳密な適合試験が必要になります。
- 輸血はすぐに受けられますか?
-
状況によります。
輸血には、- ドナー協力
- 血液型判定
- クロスマッチ
が必要です。
そのため緊急時でも、
準備に時間がかかる場合があります。
- 輸血は費用が高いですか?
-
病院や地域、血液確保方法で大きく異なります。
目安としては、数万円〜十数万円程度。
輸血量や回数によっても変動します。
今できる最高の選択を。
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※この記事が、飼い主さんと動物たちの
安心につながればうれしいです。
ただ、体調や治療の判断はその子ごとに違います。
実際の方針については、
必ず主治医の先生の意見を大切にしてくださいね。
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