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【現役獣医が解説】猫の膵炎の症状、検査、治療について

@vet-pet-care

最近食べていてもなんとなく元気がない気がします…

その違和感、実は見逃せないサインかもしれません

猫の膵炎は、犬と異なり
はっきりした症状が出にくい病気です。

  • なんとなく元気がない
  • 少し食欲が落ちた

こういったわずかな変化だけで
進行してしまうこともあります。

まれな病気ではありません。
ただ隠れているだけです。

そして気づいたときには
状態が悪化していることも少なくありません。

Take Home Message
  • 猫の膵炎は症状が分かりにくく、見逃されやすい
  • 1つの検査だけでは分からず、
    いくつかの情報を組み合わせて判断する
  • 食べられない状態は危険で、早期の対応が重要
  • 痛みや吐き気の管理と、
    他の病気も含めた全体的な治療が大切

そもそも膵臓ってなにしているの?

膵臓は、体の中でとても大切な役割を持っています。
大きく分けると2つです。

Q
消化を助ける

ごはんを消化するための
強力な消化液(酵素)を作る臓器です。

通常、この消化液は
腸に届いてからスイッチが入るように、
膵臓の中では安全装置がかけられた状態になっています。

Q
血糖値を調整する

インスリンなどのホルモンを分泌して、
血糖値をコントロールしています。

猫の膵炎ってどんな病気?

猫の膵炎は比較的よく見られる病気ですが、
実は95%以上のケースで原因ははっきり分かっていません。

決して飼い主さんのせいではありません。

膵炎には大きく分けて

  • 急性膵炎
  • 慢性膵炎

の2つのタイプがあります。

それぞれで体の中で
起きているトラブルの仕組みが少しずつ違います。

急性膵炎(消化液の暴走によるボヤ騒ぎ)

何らかの理由でこの安全装置が壊れてしまい、
腸に届く前の膵臓の中で消化液のスイッチが入ってしまうことで起こります。

Q
自分自身を溶かしてしまう(自己消化)

強力な消化液が、
食べ物ではなく膵臓自身を溶かし始めてしまいます

Q
全身へ火事が広がる

膵臓の細胞が壊れると、
ダメージが引き金となって強い炎症(火事)が起こり、
周りの血管や他の臓器、さらには全身へと一気に広がってしまうことがあります。

Q
猫特有の体のつくり

腸・肝臓・胆管と膵臓が近くでつながっているため、
他の臓器のトラブルが膵炎のきっかけになることもあります。
いわゆる「三臓器炎」

慢性膵炎(長引くストレスによるすり減りと硬化)

慢性膵炎は、急性のように急に消化液が暴走して始まるわけではありません。
弱火でじわじわとダメージを受け続ける状態です。

Q
カチカチに硬くなる(線維化)

小さな炎症や、細胞へのストレス(酸化ストレスなど)が
長期間繰り返されることで発症します。
ダメージを受けた膵臓を体が修復しようとし続けた結果、
膵臓の組織が徐々にカチカチに硬くなってしまいます

Q
周りからのもらい火

腸や肝臓など、すぐ隣にある臓器で起きている慢性の炎症が飛び火して、
膵臓にもじわじわと悪影響を及ぼすことがあります。

一度カチカチになってしまった膵臓の組織は、
残念ながら元の柔らかい状態に戻ることは難しいされています。

なぜ気づきにくいのか

犬の膵炎と違い、猫では
激しい嘔吐、強い腹痛といった
目に見える症状が出ないことが多いです。

病院での触診で腹部の痛みが確認されるのは
約10%程度という報告もあります。

その代わりに

  • 元気がない
  • 食欲が落ちる
  • じっとしている

といった曖昧な変化だけのことが多いです。

こうした変化はとても小さく、
日常の中では気づきにくいことも少なくありません。

特に、体重のわずかな変化は
最初のサインになることもあります。

だからこそ、
体重や活動量、トイレの回数などを「見える形」で把握しておくことも大切です。

最近では、
自動で体重や行動を記録してくれるトレッタCatlogといったツールもあり、
こうした変化に早く気づく手助けになります。

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検査ですぐに分かるの?

結論から言うと
1つの検査だけで膵炎を判断することはできません。

猫の膵炎は、
検査にもそれぞれ得意・不得意があります。

そのため複数の検査を組み合わせて判断していきます。

Q
一般血液検査(除外と合併症の確認)

膵炎そのものを診断する検査ではありません。
体全体の状態を把握し、脱水や炎症、臓器の負担を確認します。
また、膵炎と似た症状を示す他の病気がないかを見極める役割もあります。

膵炎だけを見る検査ではなく、
今の体の全体像を見るための検査です。

Q
膵臓の特異的マーカー(fPLI)

膵臓に特異的な酵素を測定する血液検査です。
数値が高い場合、膵炎の可能性が高いと判断する手がかりになります。
ただし、
正常でも膵炎を完全に否定することはできません。

アミラーゼやfTLIは診断としての有用性は限定的とされています。

Q
画像診断の主役は超音波検査(エコー検査)

超音波検査は膵臓の見た目の変化を確認する検査
腫れや周囲の炎症などを直接評価できるため大切です。
急性か慢性かを判断することは難しい場合もあります。

※レントゲン検査は膵炎の診断にはあまり向いていないため、エコーが中心になります。

どんな猫ちゃんがなりやすい?

現在の獣医学では
猫の膵炎には「なりやすい年齢・性別・猫種」といった明確な傾向は確認されていません。

また、犬や人と違い
肥満や食事内容などがはっきりした原因になるとも言い切れない病気です。

どんな猫がなりやすいかというより
他の病気と一緒に起きることが多い
という特徴があります。

特に一緒に見られることが多いのは
  • 糖尿病
  • 慢性腸症(IBDなど)
  • 肝リピドーシス(脂肪肝)
  • 胆管炎
  • 腎臓の病気
  • 免疫の異常(IMHAなど)
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膵炎の治療

猫の膵炎の95%以上は特発性(原因不明)とされています。

猫の膵炎には根本的に治す薬はありません。
体の状態を支える「サポート治療」が中心になります。

急性膵炎の治療(4つの柱)

Q
積極的な点滴

脱水を改善するだけでなく膵臓の血流を保つために重要です。
血流が悪くなると、炎症やダメージが進みやすくなります。
そのため、急性膵炎では早い段階でしっかりと点滴を行います。

Q
絶食の禁止と早期の給餌

現在は「絶食」は推奨されていません。
食べない状態が続くと、猫では脂肪肝などのリスクが高まります。
そのため、食欲増進剤などを使用してでも、できるだけ早く食べることが重要とされています。

それでも48時間以内に食べられない場合は、チューブで栄養を入れることもあります。

Q
積極的な疼痛管理(痛み止め)

猫は痛みを隠す天才です。そのため軽く見られがちです。
しかし実際には強い痛みを感じていることが多いとされています。
そのため、しっかりとした鎮痛薬を使うことが重要です。

Q
吐き気止め(制吐薬)の活用

吐き気は食欲低下の大きな原因になります。
そのため、制吐薬を使って吐き気を抑えることが重要です。
吐き気が改善すると、食べられるようになることもあります。

種類によっては内臓の痛みを和らげる効果(内臓鎮痛作用)を持つ可能性もあり、治療に大きく貢献します。

現在推奨されない治療
  • 明らかな細菌感染が疑われない時の抗生剤治療
  • 併発疾患が疑われないときのステロイド治療
  • 外科

慢性膵炎の治療

慢性膵炎の治療は、急性膵炎とは少しアプローチが異なります。

急性のように一時的な炎症を抑えるのではなく、
炎症の進行を抑えながら、生活の質(QOL)を保つこと
が目的になります。

そのため治療は、
「治す」というより「うまく付き合っていく」
という考え方が中心になります。

Q
併発疾患(他の病気)の治療を最優先にする

慢性膵炎は、他の病気と一緒に起きていることが多いです。
特に、胆管炎や腸の病気(IBD)、糖尿病などがよく見られます。
そのため、膵炎だけでなく、これらの病気の治療も重要になります。

全体を見て治療することが基本になります。

Q
痛みと吐き気のコントロール

慢性膵炎でも、内臓の痛みや吐き気が出ることがあります。
猫はそれを隠すため、気づきにくいことがあります。
そのため、痛み止めや吐き気止めの投薬が重要になります。

食欲を保つための土台になります。

Q
食欲増進剤の活用

慢性膵炎ではしっかり食べることがとても大切です。
食欲が落ちている場合は、食欲増進剤を使うこともあります。
食べられる状態を作ることが回復につながります。

Q
食事について

猫では犬と異なり、脂肪が膵炎を悪化させる明確な証拠はありません。
そのため、必ずしも低脂肪食にする必要はありません。
大切なのは「しっかり食べられること」です。
嗜好性の高いフードを試してみるのも一つの方法です。

その子に合った食事を選ぶことが重要です。

Q
炎症と線維化を抑えるために

慢性的な炎症を抑えるために、ステロイドなどを使うことがあります。
ただし、副作用(特に糖尿病)には注意が必要です。
状況に応じて別の薬(シクロスポリン)が使われることもあります。

必ず獣医師の指示のもとで行いましょう。

Q
サプリメント

慢性膵炎では、ビタミンB12が不足することがあります。
不足している場合は、補うことで状態が改善することがあります。
血液検査で確認しながら補充します。

慢性膵炎のケアで一番大切なのは、
しっかり食べられる状態を維持することです。

小さな変化を見逃さず、
痛みや吐き気をコントロールしてあげることが大切です。

無理に低脂肪食にこだわる必要はありません。
その子が無理なく続けられる食事やケアを、
かかりつけの動物病院と相談しながら見つけていきましょう。

まとめ

猫の膵炎は気づきやすい症状が出にくい病気です。

だからこそ
「なんとなくおかしい」

この違和感がとても大切になります。

早く気づくことで
重症化を防げる可能性が高まります。

気になる変化があれば、早めに動物病院に相談することが大切です。

よくある質問

Q
猫の膵炎はどんな症状が出ますか?

はっきりした症状が出にくいのが特徴です。

元気がない、食欲が少し落ちた、じっとしているなど、
一見すると軽そうな変化だけのことも多くあります。

そのため、進行してから気づくことも少なくありません。

Q
食べているのに元気がないのは膵炎の可能性がありますか?

可能性の一つとして考えられます。

猫の膵炎では、食欲が完全に落ちるとは限らず、
食べているけど元気がないという状態で進行することもあります。

いつもと違う様子が続く場合は注意が必要です。

Q
検査をすればすぐに分かりますか?

1つの検査だけで確定することはできません。

血液検査、エコー検査、症状などを組み合わせて、
総合的に判断していきます。

そのため、検査結果だけでなく全体を見ることが大切です。

Q
膵炎は治る病気ですか?

完全に元の状態に戻るとは限りません。

特に慢性膵炎では、炎症によって硬くなった組織は元に戻りにくいとされています。

そのため、「治す」よりも「コントロールする」ことが大切になります。

Q
食べないときはどうすればいいですか?

食べない状態が続くことが最もリスクになります。

できるだけ早く食べられる状態を作ることが重要で、
必要に応じて食欲増進剤や嗜好性の高いフードを使うこともあります。

改善しない場合は早めに動物病院へ相談してください。

Q
家でできることはありますか?

日常の変化に早く気づくことが最も大切です。

体重の変化、食事量、活動量などを把握しておくことで、
異常に気づきやすくなります。

小さな違和感を見逃さないことが早期発見につながります。

Q
膵炎になりやすい特徴はありますか?

特定の年齢・性別・猫種などの明確な傾向は確認されていません。

ただし、糖尿病や腸の病気、胆管炎など、
他の病気と一緒に起きることが多いとされています。

どんな猫でも起こり得る病気です。

本記事は、ACVIM(アメリカ獣医内科学会)のコンセンサスステートメントをもとに作成しています。
内容は一般的な指針であり、個々の状態や併発疾患によって適切な検査・治療は異なります。
https://www.acvim.org/

気になる症状がある場合は、かかりつけの動物病院でご相談ください。

今できる最高の選択を。

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獣医かえちゃん
小動物勤務医
都内で勤務している獣医師です。 約10年間、犬と猫の診療に携わってきました。 診察室では 「これって病気?」 「様子を見ていい?」 といった質問をよく受けます。 このブログは、そんな日常の小さな不安に分かりやすく答えるために始めました。 専門用語はできるだけ使わず、 「今なにが起きているのか」「何に気をつければいいのか」を、 獣医として・飼い主としての両方の視点で情報を発信しています。 匿名質問(マシュマロ)も受け付けていますので、お気軽にどうぞ。
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