犬・猫の非再生性貧血とは?血を作れないとき体で起きていることを現役獣医が解説
少しずつ貧血になっていると言われました…
どこかで出血しているんですか?

今回の貧血は
血を作れていないタイプかもしれません

血を…作れていない?
何が起きているんでしょうか?

貧血と聞くと、
- 血が失われている
- 血が壊されている
そんなイメージを持つ方が多いと思います。
でも実はもう一つ、
まったく違うタイプの貧血があります。
それが 非再生性貧血。
体は赤血球を増やそうとしているのに、
増やすことができない。
増やしたくても、増やせない。
前回お話しした「再生性貧血」が
体が必死に血を増やそうとしている状態でした。
同じ「貧血」でも、
体の中で起きていることはまったく違います。

再生性貧血との違いを整理したい方は、
先にこちらの記事を読むと理解しやすくなります。

- 非再生性貧血=血を作れない貧血
- 原因は「材料・指令・工場」のどこか
- 診断は作れない理由探し
- 1回の検査だけで判断しない
血を作る仕組みから考える
赤血球は
(エリスロポエチン=EPO)の指令で増えます
つまり非再生性貧血は、
- 作る工場が壊れている
- 材料が足りない
- 指令が来ない
こうしたどこかに異常がある状態です。
原因は大きく6つに分かれます
臨床で遭遇する多くは、
このどこかに当てはまります。
- 材料不足(鉄欠乏)
-
鉄の摂取不足ではなく、
慢性的な出血が続くと、
体の鉄は少しずつ失われていきます。すると赤血球を作りたくても
材料が足りず作れなくなります。代表例- 消化管出血
- 腫瘍出血
- 潰瘍
- 寄生虫
急性出血では再生性を示しますが、
慢性化すると鉄が枯渇し、
非再生性へ移行することがあります。
- 慢性炎症に伴う貧血
-
臨床で最も多い原因です。
体に慢性的な炎症があると、
- 鉄が利用できない
- 赤血球産生が抑制される
状態になります。
代表例- 歯周病
- 皮膚炎
- 膿瘍
- 腫瘍
- 慢性感染症
軽度〜中等度の貧血が多く、
見逃されやすいのも特徴です。
- 腎臓の機能低下
-
腎臓はエリスロポエチン
という造血ホルモンを分泌しています。慢性腎臓病になるとこの分泌が低下し、
赤血球が作れなくなります。犬猫ともに、
慢性腎臓病では貧血を伴うことが多く見られます。
- 内分泌疾患
-
ホルモンは造血を支えています。
つまり内分泌ホルモンが低下する病気は
軽度の貧血になることがあります。代表例- 甲状腺機能低下症
- 副腎皮質機能低下症
特に副腎皮質機能低下症の犬は
消化管出血を併発することもあるので要注意重度になることは少ないですが、
鑑別診断として大切です。
- ウイルス感染症
-
猫
- FeLV(猫白血病)
- FIV(猫免疫不全/猫エイズ)
- FIP(猫伝染性腹膜炎)
犬- パルボウイルス
- エーリキア
- バベシア
- 骨髄疾患
-
ここは最も見逃してはいけない領域になります。
骨髄は赤血球を作る工場。
ここ自体に異常があると、
血液を作ることができません。代表疾患- 再生不良性貧血
- 赤芽球癆(PRCA)
- 骨髄異形成症候群(MDS)
- 白血病
- 腫瘍浸潤
赤血球だけでなく、
- 白血球(WBC)
- 血小板(PLT)
も減少する(=汎血球減少)場合、
骨髄疾患を強く疑います。

原因は一つとは限りません
ここも臨床でとても重要なポイントです。
非再生性貧血は、
単一の原因で起きているとは限りません。
- 慢性腎臓病に慢性炎症が重なる
- 腫瘍による出血と炎症が併発する
- 感染症と骨髄抑制が同時に存在する
といったように、
複数の要因が重なって
造血が抑制されているケースもあります。
そのため診断では、
一つ原因が見つかっても安心せず、
「本当にそれだけか?」
という視点で評価することが重要です。

治療の考え方
ここで一つ大切なポイントがあります。
非再生性貧血の治療は、
貧血そのものを直接治す治療ではありません。
本当に重要なのは、
なぜ血を作れないのか
という原因へのアプローチです。
- 鉄欠乏
→ 慢性出血の対応や鉄補充など - 腎性貧血
→ エリスロポエチン補充 - 感染症
→ 抗菌・抗ウイルス治療 - 免疫介在
→ 免疫抑制 - 骨髄疾患
→ 専門治療
治療は原因によって大きく変わります。

検査は「千里の道も一歩から」
原因特定は一つずつ積み重ねます。
大切なのが
本当に非再生かの確認です。
- 網状赤血球(若い赤血球)
- 血液塗抹
- 鉄評価
- 腎機能
- 炎症マーカー
- 感染症検査
原因が特定できない場合や重度貧血時に。

偽非再生という落とし穴
他の記事にも書きましたが、
貧血が起こったとしても
体の反応にはタイムラグがあります。
急性出血や溶血の初期では、
まだ骨髄が反応しきれておらず、
非再生性に見えることがあります。

つまり、1回の検査だけでは判断できない。
時間経過を踏まえた再評価が重要です。

まとめ
非再生性貧血は、
血が減った理由ではなく
血を作れない理由を探します。
原因は
- 材料不足
- 慢性炎症
- 腎臓病
- ホルモン異常
- 骨髄疾患
軽度の慢性疾患から、
命に関わる病気まで幅広く存在します。
そして治療で最も重要なのは、
貧血そのものではなく原因疾患へのアプローチです。
非再生性貧血の治療は
原因疾患の治療から始まります。
ここが出発点になります。
さらに注意したいのが、
原因が一つとは限らないという点。
複数要因が重なり
造血が抑制されていることも少なくありません。
だからこそ診断は、
一つ見つけて終わりではなく
全体像を評価する視点が大切になります。
再生性と非再生性は対極。
まずは「作れているか」を見ることが
診断の第一歩です。
よくある質問
- 非再生性貧血は治りますか?
-
原因によって大きく変わります。
- 鉄欠乏
- 慢性炎症
- 内分泌疾患
こうした場合は、原因治療で改善が期待できます。
一方で
- 骨髄疾患
- 白血病
- 再生不良性貧血
では長期管理や治療が必要になることもあります。
- 再生性貧血との違いは何ですか?
-
最も大きな違いは再生の有無です。
- 再生性:血が失われている/壊れている
- 非再生性:血を作れていない
同じ貧血でも、
原因も検査も治療もまったく異なります。再生性貧血と非再生性貧血の違いを確認
犬・猫の貧血とは?歯ぐきが白いとき体で起きていることを現役獣医が解説
- 検査はどこまで必要ですか?
-
段階的に進めます。
まずは初めに- 血液検査
- 再生像の評価
その後- 血清鉄
- 腎機能
- 炎症
- 感染症
原因が特定できない場合や重度では、
骨髄検査が検討されます。
- 骨髄検査は必ず必要ですか?
-
必ずではありません。
- 血液検査
- 画像検査
- 感染症検査
で原因が推定できる場合は不要です。
ただし
- 重度貧血
- 汎血球減少(貧血や白血球、血小板減少)
- 原因不明
こうした場合は
骨髄検査が診断の決め手になることがあります。
- すぐに輸血が必要ですか?
-
貧血の重症度と症状で判断します。
- 元気消失
- 呼吸促迫
- 失神
などがあれば輸血適応になります。
ただし非再生性では、輸血は「対症療法」。
根本治療は原因へのアプローチになります。
- 1回の検査で診断できますか?
-
できないことも多いです。
再生反応にはタイムラグがあり、
初期は非再生性に見える場合があります。そのため数日後の
再検査が非常に大切になります。
今できる最高の選択を。
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※この記事が、飼い主さんと動物たちの
安心につながればうれしいです。
ただ、体調や治療の判断はその子ごとに違います。
実際の方針については、
必ず主治医の先生の意見を大切にしてくださいね。
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