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猫の腎不全:多飲多尿は「飲むから出る」じゃない|尿検査で早期発見

@vet-pet-care

最近、水をよく飲むしトイレも増えました。腎不全でしょうか?

腎臓病でも起きますが、実は他の病気でも起きます。
まず大事なのは「順番」を知ることです。

順番、ですか?

はい。
多くの飼い主さんが誤解していますが、
腎臓病では「飲むから出る」ではなく
「出るから飲む」が基本です

血液検査で異常がなければ安心していいですか?

血液は変化が遅れる場合があります。
だからこそ尿の情報(尿比重・尿量)がとても重要なんです。

猫の宿命とも言える「腎臓病(腎不全)」。
実は、血液検査で異常が見つかった時には、
すでに腎臓の機能の大半が低下していることも少なくありません。

今回は、「血液検査よりも先にSOSを出す尿検査の重要性」と、
現在の状態を知るための指標について解説します。

※ 治療の詳細については、内容が長くなるため別の記事でご紹介します。

Take Home Message
  • 血液検査で異常が出る頃には、
    腎機能の約75%が失われていることがあります
  • 尿検査こそが最も早いSOSサイン。
    日々の尿量を確認しましょう
  • 「飲むから出る」ではなく 
    「出るから飲む」 。
    多尿は腎臓の故障サインです

「多飲・多尿」の具体的な基準
うちの子は飲みすぎ?

最近よく飲む気がするけれど、これって普通?


そう感じて受診される飼い主さんはとても多いです。
まずは、医学的な目安を知っておきましょう。

多飲(飲みすぎ)の定義
1日に体重1kgあたり
50〜60ml以上の水を飲む場合、多飲と考えます。
体重4kgの場合
→ 1日 200〜240ml以上 飲んでいたら注意が必要です。
多尿(出しすぎ)の定義
1日に体重1kgあたり
40〜50ml以上の尿量がある場合、多尿と考えます。
体重4kgの場合
1日 200ml以上排尿していたら
砂の固まりが急に大きくなった場合も要注意です。

※「食事の内容でも変わります」

ウェットフード:
食事から水分が摂れているはずなので、
50mlも飲んでいたら多めの印象になります。

ドライフード:
1kgあたり50ml程度は正常範囲内のこともあります。

血液検査に異常が出る前に、
「尿量の増加」をキャッチしましょう。
システムトイレの下に敷くシートの重さや、
砂の固まりの大きさをチェックすることが、
猫ちゃんの寿命を延ばす鍵になります。

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 血液検査は「手遅れ」に近い!?診断の時間軸

多くの飼い主さんは血液検査の数値を信じていますが、実は腎臓は非常に「我慢強い」臓器です。
機能の相当数が失われない限り、血液検査の数値は乱れません。

腎機能残存率と検査のタイミング

100%
健康な状態
33%
🚨 尿検査に異常
25%
❌ 血液検査に異常

尿比重が早期サインになる理由

腎臓の機能が約60%失われた段階で、
まず「尿を濃縮する力(尿比重)」が落ち始めます。
一方で、血液検査の数値が上がるのは、
機能が約75%失われてからです。

つまり、血液検査で「異常なし」と言われても、
尿検査(比重)ではすでに病気が始まっていることが多々あります。
「血液検査よりも尿検査の方が、圧倒的に早く気づける」
これが早期発見の鉄則です。

多飲多尿はなぜ起きる?「出る→飲む」の仕組み

腎不全の猫ちゃんは、
「おしっこがたくさん出てしまうから、喉が渇いて飲んでいる」のです。
飲むから出るのではなく、出るから飲む。
この順番を間違えてはいけません。

左は正常な腎臓の模式図です。
右は尿細管障害が起きて
老廃物が上手く濃縮できず蓄積しているイメージです。

腎不全になると尿細管が壊れ、水分を回収できなくなります。
その結果、薄い尿がドバドバと出てしまう。
糖尿病も似ていますが、あちらは尿中の糖が水分を引き込む「浸透圧性利尿」。
猫の腎不全は「水分を捕まえる壁自体が壊れている」状態です。

多飲多尿の「原因」は腎臓だけじゃない

多飲多尿で有名なのが腎不全ですが、
全部がそうという訳ではないので他の可能性も考えていきましょう。

  • 腎臓(慢性腎臓病)
  • 糖尿病
  • 子宮蓄膿症(未避妊の女の子)
  • 薬(ステロイド等)や点滴後
  • 高カルシウム血症
  • 心因性/環境要因
  • 甲状腺機能亢進症(必発ではない)

恐怖の悪循環:脱水・高血圧・尿蛋白

腎臓は基本的には悪化をしないようにその時の状態を維持することが主体になります。
そのため悪化の原因になり得る物を知っておきましょう

尿濃縮ができず、尿量が増える(多尿)

体から水分が失われ脱水になる

腎臓への血流量が落ち、ダメージがさらに加速

この脱水がさらなる腎ダメージを生むスパイラルを食い止めるには、
お家でのモニタリングが不可欠です。

家で出来るチェックリスト

  • 水の減り方(前週比で増えてないか)
  • トイレの回数/塊の大きさ(砂)もしくは尿量
  • 体重(週1を目安に)
  • 食欲・嘔吐・口臭・毛づや
  • 脱水の目安(歯ぐきの乾き、皮膚の戻り)

病院で確認すべき検査

  • 尿検査:尿比重、蛋白、沈渣
  • 血液検査:BUN/Cre、SDMA、リン、電解質
  • 血圧:高血圧の有無
  • 尿蛋白の定量(必要なら)
  • 画像(必要なら超音波)

IRISステージ

腎臓は基本的に機能の回復を目指す治療では無く、
悪化を防ぐ治療になります。
そのために今の腎臓のステージがどのくらいなのかを見ることや
悪化要因となり得る物の予防を考えていきましょう。

ステージ クレアチニン SDMA 状態
11.6 未満18 未満尿比重低下などの予備軍。
21.6 〜 2.818 〜 35多飲多尿が顕著に。
32.9 〜 5.036 〜 54尿毒症症状が出始める。
45.0 超54 超重度の尿毒症。

この表は猫の目安です。

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検査
FGF23と血圧と尿蛋白

FGF23

リンが血液検査で上がる前の「超早期」に上昇するホルモン。
これに異常があれば、他が正常でも
食事療法やリンの吸着剤を検討するタイミングです。

高血圧と尿蛋白

これらは腎臓を物理的に壊す刺客。
病院でコントロールすることで、
腎臓の寿命は大きく延びる傾向にあります。

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治療の内容

多飲多尿の理由が腎不全がだったときにどんな治療があるのでしょうか?

  • 食事(腎臓配慮食)
  • 水分(飲水工夫/必要なら皮下補液)
  • リン管理(食事+必要なら対策)
  • 血圧・尿蛋白の管理

必ず主治医の先生と相談し、適切な治療を検討してから始めてください

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よくある質問

Q
水をたくさん飲んでいますが、必ず腎不全ですか?

いいえ、必ずしも腎不全とは限りません。
腎不全以外にも、糖尿病・甲状腺機能亢進症・薬の影響・環境要因などでも多飲多尿は起こります。
大切なのは「原因を決めつけず、順番と数値で確認すること」です。

Q
血液検査が正常なら、しばらく様子見で大丈夫ですか?

慎重に考える必要があります。
腎臓は非常に我慢強い臓器のため、血液検査に異常が出る頃には
すでに腎機能の多くが失われていることがあります。
血液が正常でも、尿比重や尿量の変化が先に出ることは珍しくありません。

Q
家で尿量を測るのは難しくありませんか?

完璧に測る必要はありません。

  • 砂の固まりが大きくなった
  • 回数が増えた
  • トイレ掃除の頻度が変わった

こうした「いつもとの違い」に気づくだけでも十分な早期サインになります。
可能であれば、シートの重さやIoT機器を使うのも一つの方法です。

Q
ウェットフードにすると水を飲まなくても大丈夫ですか?

ウェットフードは水分補給にとても有効ですが、
「水を飲まなくてよい」わけではありません。
食事+飲水の両方で水分を確保できているかを、尿量や体調で確認しましょう。

Q
多飲多尿があっても元気なら、急ぐ必要はありませんか?

元気な時こそ、実は大切なタイミングです。
猫の腎臓病は「静かに進行する病気」で、
症状が出た時には進行していることも少なくありません。
元気なうちに気づけるかどうかが、その後を大きく左右します。

Q
どのタイミングで病院を受診すべきですか?

以下のような変化があれば、受診をおすすめします。

  • 水の減り方が明らかに増えた
  • トイレの回数・量が変わった
  • 尿の色や匂いが薄くなった
  • 体重が少しずつ減っている

「気のせいかも」と思う段階での相談が、結果的に一番負担が少なくなります。

Q
腎不全と診断されたら、必ず治療が必要ですか?

腎不全は「治す病気」ではなく「進行を抑える病気」です。
そのため、ステージや状態によって

  • 食事管理
  • 水分管理
  • 血圧や尿蛋白の管理

など、必要な対応は異なります。
治療内容は必ず主治医の先生と相談して決めましょう。

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獣医かえちゃん
獣医かえちゃん
小動物勤務医
都内で勤務している獣医師です。 約10年間、犬と猫の診療に携わってきました。 診察室では 「これって病気?」 「様子を見ていい?」 といった質問をよく受けます。 このブログは、そんな日常の小さな不安に分かりやすく答えるために始めました。 専門用語はできるだけ使わず、 「今なにが起きているのか」「何に気をつければいいのか」を、 獣医として・飼い主としての両方の視点で情報を発信しています。 匿名質問(マシュマロ)も受け付けていますので、お気軽にどうぞ。
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