腫瘍とは体の中で何が起きているのか
「腫瘍」や「がん」と聞くと、多くの方は「ある日突然、悪いものができた」と感じるかもしれません。
しかし実際には、もともと体の一部だった細胞が、決められたルールを守らなくなった状態です。
この記事では、腫瘍、悪性度、抗がん剤、転移について、ひとつの例え話でまとめて説明します。
- 腫瘍は「ルールを守らない細胞の増殖」
- 悪性度は「どれくらい仕事がめちゃめちゃか」
- 抗がん剤は腫瘍だけを完全に狙い撃ちする治療ではない
- 転移は「別の支店で問題が始まること」
腫瘍について体を「会社」に例えて説明します
今回の内容は難しい言葉は使わずに説明出来たらと思います。
基本的な対応関係
- 体:会社
- 臓器:支店
- 細胞:社員
- 体のルール:増え方・働き方の決まり
ほとんどの社員(細胞)は、決められたルールを守って働いています。
腫瘍細胞とは「ルールを守らない社員」
腫瘍細胞も、もともとは普通の会社員(正常な細胞)でした。
しかし途中から
- 会社のルールを無視する
- 上司(体の制御・免疫)の指示を聞かない
- 自分のルールで仕事をする
社員に変わってしまいます。
つまり
- 一応仕事をしているように見える
- しかし会社にとって必要な仕事ができない
- 内容もめちゃめちゃ
👉 存在するだけで周囲の仕事を邪魔します。
増殖が始まる仕組み
上司(免疫や制御機構)が監視しているため、こうした問題社員は増える前に排除されます。
この段階では症状も検査異常も出ないことがほとんどです。
しかし、何かのきっかけで監視をすり抜け注意されなくなると、その社員は「このやり方で問題ない」と考えます。
そして、新しく来た新人に同じおかしな仕事のやり方を教え始めます。
最初は 1人 → 2人 → 3人 とゆっくりですが、
教える側が増え、教えられる新人も増えることで、途中から一気に増殖します。
ある段階を超えると、体の制御(免疫など)が追いつかなくなります。
悪性度とは
「どれくらい仕事がめちゃめちゃか」
腫瘍には、悪性度が高い・低いという評価があります。
👉 悪性度とは
「どれくらい働き方が崩れているか(正常な細胞から逸脱しているか)」の指標です。
抗がん剤とは何をしている治療なのか
「悪いものをやっつける魔法の薬」ではありません。
体全体への影響を理解したうえで使う治療です。
抗がん剤は成果を出せていない人を一斉に足切りする制度のようなものです。
この制度では、ルール無視の社員(腫瘍細胞)は確かに減ります。
しかし、抗がん剤は「ルール無視の社員」と「正常な社員」を区別して攻撃できません。特に細胞分裂が活発な(新しく人が入ってくる)部署は影響を受けます。
- 新しく来た新人(骨髄—血液細胞)
- これから成長する正常な社員(毛根細胞、消化管粘膜細胞)
これらも一緒に切られてしまいます。
👉 余計なことをする人だけを正確に排除することはできないため、副作用が発生します。
がん(腫瘍)の転移とは何が起きているのか
転移とは、本社にいた問題を起こす社員が勝手に支店へ行ってしまうことです。
転移した先でも、同じくルール無視の働き方をしてその同じやり方を新人に教える。
👉 転移とは、新しい場所で腫瘍が増え始めることです。
なぜ特定の臓器に転移しやすいのか
移動するには電車や道路が必要です。体の中では、血管やリンパ管がそれにあたります。
出入りが多い場所ほど、問題社員は紛れ込みやすくなります。
血管が豊富で、常に多くの血液が出入りしている臓器は、
- 肝臓
- 脾臓
- 肺
👉 そのため、これらの臓器は転移が起こりやすくなります。
腫瘍に対するFAQ
- 腫瘍とがんは同じ意味ですか?
-
腫瘍には
- 良性腫瘍
- 悪性腫瘍(=がん)
があります。
この記事では分かりやすさを重視し
主に悪性腫瘍(がん)を想定して説明しています。
- 悪性度が低いなら、あまり心配しなくていいのでしょうか?
-
「今すぐ命に関わる可能性が低い」ことはありますが、「問題がない」という意味ではありません。
悪性度が低い腫瘍でも、
- 少しずつ大きくなる
- 周囲の組織を圧迫する
- 将来的に治療が必要になる
ことがあります。
悪性度は「緊急性の目安」と考えると分かりやすいです。
- 転移がある=もう手遅れ、ということですか?
-
いいえ、必ずしもそうではありません。
転移があるということは
「問題が別の支店でも起きている」状態ですが、- 進行がゆっくりな転移
- 数が少ない転移
では、治療の選択肢が残ることも多くあります。
👉 転移の有無だけで、治療の価値が決まるわけではありません。
- 抗がん剤は必ずやらなければいけませんか?
-
抗がん剤は
- 腫瘍の種類
- 悪性度
- 進行度
- その子の体調や性格
- ご家族の考え方
を踏まえて選択されます。
👉 やる・やらないの二択ではなく、
「どう付き合うか」を考える治療です。
- 副作用が怖いのですが、それでも使う意味はありますか?
-
副作用のリスクと、得られるメリットを比べて判断します。
抗がん剤は
腫瘍だけを完全に狙い撃ちできないため副作用は避けられません。そのため
- 腫瘍を抑えることで生活の質(=QOL)が上がるか
- 症状を和らげられるか
を重視して使われます。
👉 「延命」だけが目的ではありません。
- なぜ肝臓や肺に転移しやすいのですか?
-
血液の出入りがとても多い臓器だからです。
体の中では、
- 血管
- リンパ管
が細胞の移動経路になります。
肝臓・脾臓・肺は
常に大量の血液が流れ込むため、
移動してきた腫瘍細胞が紛れ込みやすい場所です。
- この話はすべての腫瘍に当てはまりますか?
-
基本的な考え方としては当てはまりますが、個別差は大きいです。
腫瘍は種類によって、
- 増え方
- 転移しやすさ
- 治療への反応
が大きく異なります。
だからこそ診断をすることが大切です。この記事は
「腫瘍とは何が起きているのか」を理解するための土台として読んでください。
- 結局、何を一番大切に考えればいいですか?
-
「正解」よりも「その子とご家族が納得できる選択」です。
腫瘍の治療には一つの正解はありません。
- 生活の質
- その子らしさ
- ご家族の考え
を含めて選ぶことが最も大切です。
腫瘍と向き合うときに大切な考え方
この記事は、日々診療の中で感じる「腫瘍の説明がうまく伝わらない」という経験をもとにまとめています。
治療方針を決めるための結論を出すものではなく、腫瘍についてなるべく飲み込みやすくするための土台を作るための記事です。
獣医師と同じ言葉・同じイメージで腫瘍について話し合うための「共通の地図」として使ってもらえたらと思います。
今できる最高の選択を。
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