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【手術をする獣医が解説】犬の前十字靭帯断裂の手術とは?TPLOと関節外法の違いを坂道の車でやさしく解説

【手術をする獣医が解説】犬の前十字靭帯断裂の手術とは?TPLOと関節外法の違い。「はやくよくなってね」の包帯を巻いてベッドで眠るシェルティの水彩イラスト
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前十字靭帯が切れていると言われて…
手術にはいくつか方法があると聞きました。

はい。
大きく分けると、2つの考え方があります。

何が違うんですか?

前回の坂道に止めた車で考えると、
すっきりわかりますよ。

前回は、
犬の膝は坂道に止めた車、
前十字靭帯はその車のサイドブレーキ、
というお話をしました。

前回の記事
【手術をする獣医が解説】犬の前十字靭帯断裂とは?原因・症状を坂道に止めた車でやさしく解説
【手術をする獣医が解説】犬の前十字靭帯断裂とは?原因・症状を坂道に止めた車でやさしく解説

ブレーキが壊れたとき、
手術で車を止める方法は
大きく2つです。

Take Home Message
  • 手術は大きく2つ。坂を平らにするか、代わりのワイヤーを張るか
  • 坂を平らにする手術(TPLOなど)は、ブレーキがなくても車が止まる膝にする方法
  • 代わりのワイヤーを張る手術(関節外法)は、膝が硬く落ち着くまで、糸で車を支える方法
  • どちらが合うかは、体格・年齢・生活・膝の形で変わる
  • 費用は病院・体格・方法で大きく違う。見積もりで確認を

手術で目指すこと

犬の手術では、
切れたブレーキ(前十字靭帯)を
そのまま縫い直すことは、ふつう行いません。

その代わりに、

ブレーキがなくても
車がずり落ちない膝

にすることを目指します。

方法は、大きく2つです。

2つの考え方
  • 坂を平らにする(骨切り術:TPLO など)
  • 代わりのワイヤーを張る(関節外法)

坂を平らにする手術(TPLO など)

坂道そのもの、
つまりすねの骨の上の面の角度を
変える手術です。

すねの骨の上の部分を
丸く切って回し、
坂がほぼ平らになる角度で
プレートとネジで固定します。

坂が平らになれば、
荷物を積んだ車がのっても、
ブレーキなしで車がその場に止まる
ようになります。

急な坂の横で、平らにならした道に荷物を積んだ車が止まり、運転席でシェルティがくつろいでいる水彩イラスト(TPLOのたとえ)
坂を平らにすれば、ブレーキがなくても車はその場に止まります

代表的なのが、
TPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)です。

ほかにも、骨の形を変えて
車をずり落ちにくくする方法として、
TTA や CBLO などがあります。(※1)

実際に、わたしが手術した子の
レントゲンで見てみましょう。

TPLO手術前の犬のすねの骨のレントゲン。黄色の線で、すねの骨の上の面の傾き(TPA)が急なことを示している
手術前:黄色の線の角度(TPA)が大きく、坂が急
TPLO手術直後の犬のすねの骨のレントゲン。プレートで固定され、赤い線で傾き(TPA)が小さくなったことを示している
手術のすぐあと:赤い線のように、坂がほぼ平らに

黄色の線が、すねの骨の上の面の傾き
(TPA)です。
手術前は角度が大きく、
坂が急な状態でした。

骨を回してプレートで固定すると、
赤い線のように
坂がほぼ平らになります。

手術のあとの坂の角度(TPA)は、
一般的に5°くらいを目標にします。

どんな子に向いている?

  • 体が大きい子・活発な子
  • 坂が急な子(すねの骨の形)
  • これから先も、よく動ける膝を目指したい子

小型犬でも、TPLO を行うことがあります。

骨を切ってプレートで固定するので、
専用の器具と経験が必要な手術です。

切った骨がつくまでの間は、
安静をしっかり守ることが大切です。

TPLO手術から約3か月後の犬のすねの骨のレントゲン。赤丸の部分で、切った骨がついて形がなめらかに整っている
手術から約3か月:赤丸のところで、切った骨がしっかりついています

同じ子の、手術から約3か月後です。
切ったところの骨がしっかりつき、
骨の形もなめらかに整ってきています
(骨のリモデリング)。

骨がちゃんとついたかどうかは、
手術のあとの大切な目安です。
わたしの病院では、
だいたい3か月は、激しい運動を控えて
もらっています。

基本的に、体の大きい子は
こちらの手術が選択肢になります。

代わりのワイヤーを張る手術(関節外法)

壊れたブレーキの代わりに、
膝の外側に丈夫な糸を張って、
車がずり落ちないように支える方法です。

坂に止めた車を、坂の上の杭から張ったロープで支えていて、それをシェルティが見上げている水彩イラスト(関節外法のたとえ)
ブレーキの代わりに、丈夫なロープで車を支えるイメージです

関節の外に糸を張るので、
関節外法と呼ばれます。

この糸は、
ずっと車を支え続けるためのものではありません。

糸で支えている間に、
膝のまわりが厚く硬くなり、
膝そのものが車を支えられるようになる
のを待つ方法です。

どんな子に向いている?

  • 体の小さい子
  • 活動量がおだやかな子

骨を切らないので、
比べるとシンプルな手術です。

ただ、体が大きい子や活発な子では、
糸がゆるんだり切れたりしやすいことがあります。

ただ、体重だけで決まるわけではありません。
体型(BCS:太り具合の目安)、犬種、性格にも
左右されるので、病院で相談してください。

体重が軽い子や、おとなしい子では、
こちらの手術を選ぶことがあります。

どちらを選ぶ?

次のようなことを合わせて、
担当医と一緒に決めていきます。

  • 体重・体格
  • 年齢と、ほかの病気
  • 普段の運動量・生活
  • 坂の角度(すねの骨の形)
  • タイヤ(半月板)の傷み
  • 反対の足の状態
  • 安静の守りやすさ・通院・費用

研究では、TPLO のほうが、
手術した足をしっかり使えるようになるまでの
回復が良かったと言われることがあります。
(主に中型〜大型犬の研究です)(※2)(※3)

一方で、ラブラドールで比べた研究では、
2つの手術で足の使い方に
差がなかったという報告もあります。(※4)

どちらが正解、ということはありません。

その子とご家族に合う方法を
選ぶことがいちばん大切です。

どちらの手術でも、
タイヤ(半月板)が傷ついていたら、
手術のときに傷んだ部分を取り除きます。

入院と通院の流れ

一般的な流れは、こんなイメージです。

診察・検査
(触診・レントゲン・血液検査など)
手術・入院
(入院の期間は、体格や性格に合わせて相談)
退院後は、おうちで安静
(ケージやサークル)
抜糸
(手術から1〜2週間ほど)
レントゲンで骨がついたかを確認
(手術から3か月ごろが目安)
少しずつ運動を増やす(第4回)

入院の期間は、その子の体格や性格に合わせて決めます。
担当医と相談してください。

どちらの手術でも、
手術のあとは数週間の安静が必要です。(※1)

サークルの中のふかふかのマットでくつろぐシェルティに、家族の手がおやつを差し出している水彩イラスト
手術のあとは、サークルの中でゆっくり休むのがお仕事です

抜糸は、手術から1〜2週間ほどです。

そのあとは、手術から
1か月・3か月・6か月・1年くらいで、
経過を見せてもらうことが多いです。

費用の考え方

手術の費用は、
病院・体格・手術方法で大きく違います。

TPLO は、プレートや専用の器具を使う分、
関節外法より費用が高くなります。

費用には、手術そのものだけでなく、
こんなものが含まれることが多いです。

  • 手術前の検査
  • 麻酔
  • 手術(プレートや糸などの材料を含む)
  • 入院
  • お薬
  • 手術後のレントゲン・再診
  • リハビリ

金額は、必ず
手術を受ける病院の見積もりで
確認してくださいね。

ペット保険に入っている場合は、
補償の対象になるかどうかも
先に確かめておくと安心です。

気になることは、
遠慮なく担当医に聞いてください。

よくある質問

Q
手術しないという選択肢はありますか?

あります。

荷物を減らし、補助ブレーキを鍛える
保存療法という方法です。

体格などによって向き不向きがあるので、
次回詳しくお話しします。

Q
両足とも切れていたら?

状態によって、
両方を同じ日に手術するか、
時期をずらすかを担当医と相談します。

Q
高齢でも手術できますか?

年齢だけで決まるわけではありません。

麻酔のリスクや全身の状態を検査して、
担当医と一緒に判断します。

Q
プレートは取り出しますか?

そのまま入れておくことが多いです。

ただ、感染などがあれば
取り出すことがあります。

また、寒い地域でプレートが冷えて
足を気にする子なども、
取り出すことがあります。

まとめ

手術は、
坂を平らにするか、
代わりのワイヤーを張るか。

どちらも、
ブレーキがなくても車が止まる膝を
目指す方法です。

次回は、
手術をしない場合のお話です。

前十字靭帯シリーズ(全5回)

同じ坂道の車のたとえで、
順番に読めるようになっています。

シリーズ第1回
【手術をする獣医が解説】犬の前十字靭帯断裂とは?原因・症状を坂道に止めた車でやさしく解説
【手術をする獣医が解説】犬の前十字靭帯断裂とは?原因・症状を坂道に止めた車でやさしく解説

第3回(手術をしない場合の保存療法)、
第4回(手術後のリハビリとお散歩)、
第5回(猫の前十字靭帯断裂)は、
近日公開予定です。

参考にした資料

  • ※1 American College of Veterinary Surgeons(ACVS). Cranial Cruciate Ligament Disease.(米国獣医外科専門医協会の飼い主向け解説)https://www.acvs.org/small-animal/cranial-cruciate-ligament-disease/
  • ※2 Nelson SA, Krotscheck U, Rawlinson J, et al. Long-term functional outcome of tibial plateau leveling osteotomy versus extracapsular repair in a heterogeneous population of dogs. Vet Surg. 2013;42(1):38-50. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23153073/
  • ※3 Bergh MS, Sullivan C, Ferrell CL, et al. Systematic review of surgical treatments for cranial cruciate ligament disease in dogs. J Am Anim Hosp Assoc. 2014;50(5):315-321. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25028440/
  • ※4 Conzemius MG, Evans RB, Besancon MF, et al. Effect of surgical technique on limb function after surgery for rupture of the cranial cruciate ligament in dogs. J Am Vet Med Assoc. 2005;226(2):232-236. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15706973/

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獣医かえちゃん
獣医かえちゃん
小動物勤務医
都内で勤務している獣医師です。 約10年間、犬と猫の診療に携わってきました。 診察室では 「これって病気?」 「様子を見ていい?」 といった質問をよく受けます。 このブログは、そんな日常の小さな不安に分かりやすく答えるために始めました。 専門用語はできるだけ使わず、 「今なにが起きているのか」「何に気をつければいいのか」を、 獣医として・飼い主としての両方の視点で情報を発信しています。 匿名質問(マシュマロ)も受け付けていますので、お気軽にどうぞ。また、動物病院の現場では、診察の記録を助ける獣医向けのAIツール「SOAPilot」の開発・運営もしています。
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