【手術をする獣医が解説】犬のパテラは手術する?しない?判断の目安とおうちでできること

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パテラと言われたけれど、
手術した方がいいのか迷っています…

迷いますよね。
パテラの手術には、
はっきりした決まりがないんです。

では、どうやって決めるんですか?

チェーンの外れ方と、
その子の毎日の様子を見て、
一緒に考えていきましょう。

このシリーズでは、
膝のお皿を自転車のチェーン、
太ももの骨の溝をギアの歯にたとえています。

今回は、
手術をする?しない?の考え方と、
手術をしない場合にすることのお話です。
- 手術をするかに、はっきりした決まりはない
- グレードの数字だけでなく、症状・年齢・骨の形・ほかの病気で決める
- 症状のない隠れパテラでも、大人になってから半数ほどで症状が出たという報告がある
- 子犬は、1〜2か月ごとに診ながら判断する
- 手術をしない場合も、体重・床・運動・痛みのケア・年1回以上の点検を続ける
パテラの4つのタイプ
パテラは、
いつ・どんなふうに困るかで、
4つのタイプに分ける考え方があります。(※1)
- 子犬のころから骨の曲がりが強いタイプ
- 成長期〜中年で、ときどき、またはだんだん足をかばうタイプ
- 中高齢で、関節炎や前十字靭帯のけがから急に悪くなるタイプ
- 触ると外れるのに、症状がない隠れパテラ
グレードは「チェーンの外れやすさ」だけを表すもの。
骨の曲がりや筋肉の状態までは表していません。
だから、タイプも合わせて考えます。
チェーンが外れ続けると、どうなる?
外れたり戻ったりをくり返すと、
膝は少しずつ傷んでいきます。
- 膝のお皿を外側から押さえている小さな靭帯(外側大腿膝蓋靭帯)が切れて、さらに外れやすくなる
- ギアの歯がすり減る(軟骨が傷む)
- 関節炎が少しずつ進む
- 膝の中のブレーキ(前十字靭帯)に負担がかかる
パテラの手術を受けた145膝では、
およそ3分の2のお皿で軟骨がすり減っていました。
グレード4や、体重の重い子ほど目立ちました。(※2)
若いころは平気だった子が、
中高齢で急に悪くなることがあるのは、
この傷みが積み重なるためです。
手術をする?しない?の考え方

パテラと言われたら、
すぐ手術が必要というわけではありません。
手術をするかどうかに、
はっきりした決まりはないのが現状です。
グレードの数字だけでなく、症状・年齢・骨の形・ほかの病気を合わせて考えます。
手術を考える場合
- 足を上げる、跛行(足をかばう歩き方)、痛みなど、後ろ足の使いにくさがはっきりある(グレード2〜4)
- 足を上げる・跛行が2〜3週間以上続く、スキップなどの症状が1か月に2〜3回以上ある
- 様子を見る治療で良くならない
- 成長期に、グレード3〜4と診断された
- 前十字靭帯も切れている
- 大型犬や、太り気味の子(症状が重くなりやすい)
様子を見ることが多い場合
- シニアの小型犬で、たまたま見つかったグレード1〜2の隠れパテラ
- 大人になって初めて症状が出たが、回数が少なく、すぐ落ち着いた
若い子の隠れパテラは、慎重に見守る
触ると外れるのに症状がない、
若い子の隠れパテラ(グレード2〜3)は、
すぐに手術とは限りませんが、
注意して見守る必要があります。
症状のないグレード2のパテラがある
大人の犬を4年ほど追った研究では、
およそ半数が、その後に足をかばうようになったり、
手術が必要になったりしました。(※3)
また、症状が出てから手術をした場合、
早めに手術をした場合と比べて、
機能の戻りがよくないことがあります。
そのあいだに、ギアの歯(軟骨)のすり減りや、
ブレーキ(前十字靭帯)の傷みが進んでいることがあるためです。
「症状がないから大丈夫」と決めつけず、
この先どうなりうるかも知ったうえで、担当医と相談することが大切です。
関節の炎症を起こす免疫の病気や、
関節の腫瘍が原因のときは、
パテラの手術は向きません。
そのためにも、最初にしっかり調べます。
グレード3でも、元気に過ごしている子もいます。
反対に、グレード2でも
スキップが多く、痛がる子では手術を考えます。
数字より、その子の歩き方と毎日の様子を一緒に見ていきましょう。

成長期の子犬で見つかった場合
子犬は、
自転車をまだ組み立てている途中のようなもの。
骨の形が、成長とともに変わっていきます。
症状がなければ、
一度の診察で手術を決めず、
1〜2か月に1回くらい診てもらいながら、
症状や足の形の変化を見ていきます。
一方で、
生後3か月ごろから骨の曲がりが強い子や、
成長期にグレード3〜4と診断された子は、
骨の曲がりが進む前に、
早めに手術を考えます。
すねの骨の出っぱりの成長板は、
小型犬では生後10〜12か月ごろ、
大型犬では18〜22か月ごろに閉じます。
手術の方法やタイミングは、
この成長のようすも見ながら決めます。

手術をしない場合にすること
手術をしない場合も、
何もしないわけではありません。
チェーンが外れにくい乗り方を続けていきます。
- 体重管理:荷台の荷物を軽くする
- 暮らしの工夫:すべる床にマット、ジャンプや段差を減らす
- 痛みのケア:痛み止めやサプリメント
- 運動:膝のまわりの筋肉を保つ、やさしい運動
- 定期点検:大人になってからも、最低でも年に1回は膝を診てもらう
症状のない子では、
運動を制限しすぎないことも大切です。
避けたいのは、
ひねる動きや、強い衝撃がかかる動きです。
痛み止めには、
毎日の飲み薬のほかに、
胃腸や腎臓への負担が少なく
長く使いやすいタイプ(体重などの条件があります)や、
関節を守る注射などがあります。
どれを使うかは、担当医と相談しましょう。
関節のサプリメントは?
サプリメントは、あくまで補助です。
チェーンやギアの形を変えるものではありません。
関節炎の治療の国際的な指針では、
オメガ3(魚の油や緑イ貝の脂質)が
サプリメントの中でいちばん高く評価されています。
最近よく見かけるUC-II(非変性Ⅱ型コラーゲン)や緑イ貝、
グルコサミン・コンドロイチンは、
まだ根拠が少なく、控えめな評価です。(※4)
使うなら、オメガ3を中心に。
緑イ貝の脂質のサプリメントや、
UC-IIと緑イ貝を組み合わせたものもあります。
お薬との組み合わせもあるので、
始める前に担当医に相談してくださいね。
おうちでできること
手術をしてもしなくても、
チェーンが外れにくい乗り方を続けることが、
膝を守る土台になります。
すべらない床にする

ぬれた道で自転車がすべるように、
フローリングですべると、
膝に横向きの力がかかります。
よく歩く場所には、
マットやラグを敷きましょう。
寝床はやわらかいベッドに。
マットを敷けない場所では、
すべり止めのついた靴下という手もあります。
足の裏の毛や爪がのびていると、
さらにすべりやすくなります。
こまめに整えてあげてくださいね。
使いやすい道具は、第1回で紹介しています。
ジャンプと段差を減らす
ソファやベッドからの飛び降り、
階段の上り下り、
急な坂は、
膝への負担が大きい動きです。
ソファやベッドには、
ステップやスロープを置くのもひとつの方法です。
外で気をつけたい場所
- ノーリードで走る
- 岩場や砂浜
- ぬれた地面や、すべりやすい場所
- 急な方向転換やダッシュ
荷物を軽くする(体重管理)
荷台の荷物が重いほど、
チェーンにもギアにも力がかかります。
理想の体重は、担当医と一緒に確認しましょう。
獣医の私も使っている「簡単体重測定ペットくん」なら、抱っこしなくても、おうちで手軽に量れます。
膝にやさしい運動を続ける

こぐ力(太ももの筋肉)は、
チェーンをまっすぐ引くための大切な力です。
平らな道のお散歩を、
短い時間で何回かに分けるのが向いています。
- おすわり → たっち、ふせ → たっちのくり返し
- ひねらない曲げ伸ばし:膝を、まっすぐ前後の向きだけにゆっくり動かす
- リードをつけて、平らな道をゆっくり歩く
どの運動をどのくらいするかは、
膝の状態を見ながら担当医と決めましょう。
スキップした日は、
私が作っているアプリ「わんダフルデイリー」に
お散歩と一緒にメモしておけます。
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よくある質問
-
Q
- 子犬のうちにパテラと言われました。大きくなったら治りますか?
-
自然に治る病気ではありません。
ただ、成長期は骨の形が変わっていく時期です。
1〜2か月に1回くらい膝を診てもらいながら、
手術が必要かどうかを判断していきます。
グレード3〜4の子や、骨の曲がりが進む子では、
早めの手術を考えます。
-
Q
- 手術しないと、歩けなくなりますか?
-
いいえ、必ずしもそうではありません。
症状がなく、元気に過ごしている子もたくさんいます。
ただ、症状のない子でも、
大人になってから半数ほどで症状が出たという報告があります。(※3)
定期的に診てもらい、
歩き方が変わってきたときや、
急に足を上げるようになったときは、
早めに受診してください。
-
Q
- 手術をすれば、関節炎にならないですか?
-
関節炎を完全に防げるわけではありません。
手術をした膝としなかった膝で、
関節炎の進み方に大きな差がなかったという報告もあります。(※5)
手術の目的は、
チェーンが外れることによる痛みや歩きにくさを減らすことです。
-
Q
- サプリメントで治りますか?
-
サプリメントで、ギアの形は変わりません。
関節の成分の中では、
オメガ3脂肪酸(魚の油)に、
関節炎の犬で足に体重をかけやすくなったという報告があります。(※6)
始める前に、担当医に相談してください。
-
Q
- 運動はさせない方がいいですか?
-
症状がなければ、制限しすぎないことも大切です。
避けたいのは、ひねる動き・ジャンプ・ダッシュなどの強い衝撃。
平らな道のお散歩は、膝を支える筋肉を保つのに役立ちます。
-
Q
- 抱っこで気をつけることは?
-
高いところから飛び降りさせないようにしましょう。
抱っこから下ろすときは、
床の近くまで下ろしてあげてください。
まとめ
パテラの手術には、
はっきりした決まりはありません。
グレードの数字よりも、その子の歩き方と毎日の様子を見て、
担当医と一緒に決めていきます。
すべらない床、軽い体、
やさしい運動、定期点検。
チェーンが外れにくい毎日を、一緒に。
次回は、
手術でなにをするのか、
結果や合併症のお話です。

パテラシリーズ(全4回)
同じ自転車のチェーンのたとえで、
順番に読めるようになっています。
- 第1回 犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)とは?原因・グレード・症状
- 第2回 パテラは手術する?しない?判断の目安とおうちでできること(この記事)
- 第3回 パテラの手術とは?方法・結果・合併症
- 第4回 パテラの手術後のリハビリとお散歩
参考にした資料
- ※1 Piermattei DL, Flo GL. Chapter 18 The Stifle Joint. In: Brinker, Piermattei, and Flo’s Handbook of Small Animal Orthopedics and Fracture Repair. 3rd ed. Philadelphia: WB Saunders; 1997. p.564-565.
- ※2 Daems R, Janssens LA, Béosier YM. Grossly apparent cartilage erosion of the patellar articular surface in dogs with congenital medial patellar luxation. Veterinary and Comparative Orthopaedics and Traumatology. 2009;22(3):222-224. doi:10.3415/VCOT-07-08-0076
- ※3 Hamilton L, Farrell M, Mielke B, Solano M, Silva S, Calvo I. The natural history of canine occult Grade II medial patellar luxation: an observational study. Journal of Small Animal Practice. 2020;61(4):241-246. doi:10.1111/jsap.13093
- ※4 Cachon T, Frykman O, Innes JF, et al. COAST Development Group’s international consensus guidelines for the treatment of canine osteoarthritis. Frontiers in Veterinary Science. 2023;10:1137888. doi:10.3389/fvets.2023.1137888
- ※5 L’Eplattenier H, Montavon P. Patellar luxation in dogs and cats: management and prevention. Compendium on Continuing Education for the Practicing Veterinarian. 2002;24(4):292-298.
- ※6 Roush JK, Cross AR, Renberg WC, et al. Evaluation of the effects of dietary supplementation with fish oil omega-3 fatty acids on weight bearing in dogs with osteoarthritis. Journal of the American Veterinary Medical Association. 2010;236(1):67-73.(PubMed 20043801)
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