犬・猫の貧血とは?歯ぐきが白いとき体で起きていることを現役獣医が解説
歯ぐきが白いので「貧血」といわれました。

貧血は病名ではありません。
体のどこかで起きている異常を知らせるサインです。

貧血ってふらふらするという印象がありますが
体では何が起きているんでしょうか?

まずは貧血とは何が起きているのか
から話していきましょう。

診察室で、
「少し貧血があります」
「歯ぐきが白いですね」
そう言われたとき、
- え、重い病気?
- 輸血が必要?
- 命に関わる?
と、頭が真っ白になる飼い主さんはとても多いです。
でもまず知っておいてほしいのは、
貧血は病名ではありません。
体のどこかで起きている異常を知らせる
一つのサインです。
黄疸と同じように
体の色が変化して気づかれるサインのひとつですが、
大きく異なる点があります。
貧血は起きているだけで体調の悪化に直結する
という事です。
つまり
見た目の変化だけでなく、
体の機能そのものに影響が出る状態です。
この記事では、
- 貧血とは何を意味するのか
- 体の中で何が起きているのか
- 診断をするための基礎知識
できるだけ難しい専門用語を使わずに
獣医師の立場から整理してお話しします。

- 貧血は「病名」ではなく、
体の異常を知らせるサイン - 赤血球が減ると
酸素が届かずふらつきや元気消失が起きる。 - 色や元気の変化は、家で気づける重要なヒント
貧血とは何が起きている状態?
結論から言うと貧血とは、
血液の中の「赤血球量」が減っている状態
を指します。
※実際には下記の数値がいずれか
もしくは複数の項目が基準範囲を下回った状態
- 赤血球容積(PCV)
- ヘマトクリット値(Ht)
- ヘモグロビン濃度(Hb)
- 赤血球数(RBC)
最初のステップとして
動物の種類や既往症から
本当にその子にとっての
異常なのかを判断することが大切です。

そもそも赤血球ってなんだろう?
赤血球の役割はとてもシンプルです。
全身に酸素を運ぶこと。
体を一つの街に例えると、
- 赤血球=酸素を運ぶ宅配ドライバー
- 酸素=食材
- 臓器や筋肉=食材を待つ家
ドライバーが減れば、
荷物が倉庫にあったとしても、
食材(酸素)は届きにくくなります。
つまり
貧血=体の酸欠状態です。

どうやって診断するの?
貧血自体は採血をすることで
直ぐに診断することが出来ます。
一方で、原因は必ずしも単一ではないため
体系的な検査を進めることが大切になります。
その中で特徴的な所見を得られた場合は
直ぐに診断に結びつく事があります。
- 明らかな出血
- 赤血球に対する寄生体の確認
- 免疫介在性溶血性貧血の
自己凝集や球状赤血球

緊急性の有無を確認するには
以下は「すぐ受診すべきサイン」です。
- 呼吸が速い
(呼吸促迫) - 胸がドキドキしている
(動悸) - 声をかけても反応が悪い
(意識レベルの低下) - 舌や口の粘膜の色が白い
(可視粘膜の蒼白) - 明らかな黄疸
- 全身のあざ
貧血の原因になり得る薬剤や毒素
貧血は色々な原因でなり得ます。
そのため
誤食してしまった場合や使用している薬など
原因となる物が無いかを確認しましょう。

貧血で見られる症状
貧血特有の症状はありませんが
一般的に以下の症状が見られることがあります。
- 元気がない
- すぐ疲れる
- ふらつく
- 食欲低下
- 呼吸が速い
- 歯ぐきが白い
※重症度により変化
貧血の分類
ここまでで
貧血=赤血球が減っている状態
体が酸欠になる
という話をしてきました。
では次に大切なのは
「なぜ減ったのか?」
ここを整理しないと、
原因にも治療にも辿り着けません。
結論から記載すると3種類に分けられます。
どんなに複雑な理由であっても
必ずどれかに当てはまります。
- 出血性貧血
血が体から失われている状態 - 溶血性貧血
赤血球が体の中で壊れている状態 - 産生低下性貧血
赤血球を作れない状態

もう一つ大切な視点とは?
貧血と診断されたあと、
次に必ず確認するのが
体が赤血球を作ろうとしているか?
赤血球が減ったとき、
体は当然
「足りない!」
と気づきます。
そして骨髄という会社で
赤血球=ドライバーを増やそうとします。
その増やそうとしているサイン を再生像
と呼びます。
病院で再生像の有無は確認できますので
必ず見る必要があります。

再生像があるかどうかで何が変わる?
ここがとても大切です。
体が作ろうとしている
=再生性貧血
体は赤血球を増やそうとしっかり反応しています。
=再生像ありです。
つまり
「失われている」
もしくは
「壊されている」
可能性が高いです。
出血性貧血(血が失われる)
溶血性貧血(赤血球が壊れる)
ここで大切なのは、
まず出血があるかどうかを確認することです。
外傷や消化管出血、腫瘍からの出血など
明らかな出血が確認できれば
出血性貧血と考えます。
(特に消化管出血が見つけにくいです)
一方で、
出血が否定的である場合は
体の中で赤血球が壊されている
つまり溶血性貧血
である可能性が高くなります。
体が作ろうとするのが弱い
=非再生性貧血
赤血球を作る反応が弱い、
もしくは止まっている状態です。
=再生像なしもしくは低いです。
つまり
「材料がない」
「作れない理由がある」
可能性が高いです。
産生低下性貧血(作れない)
再生像にはタイムラグがあります
ここでとても大切なポイントがあります。
再生像はすぐには出てこないということです。
例えば出血や溶血が起きた直後だと
体の中では赤血球が失われていますが、
骨髄が反応して新しい赤血球を作り、
それが血液中に出てくるまでには時間がかかります。
一般的には
- 数時間〜1日程度:まだ再生像は出ない
- 48〜96時間後:再生像が確認できるようになる

石橋を叩いて渡りましょう
検査したタイミングが早すぎると
- 本当は出血性貧血
- 本当は溶血性貧血
であっても、
一見「非再生性」に見えてしまうことがあります。
これを知らないと
「再生していない=非再生貧血の病気?」
と誤解してしまう可能性があります。
臨床的な解釈のコツ
そのため実際の診療では
- 発症時期
- 症状の経過
- 再検査での変化
を合わせて判断します。
初回検査で再生像がなくても、
数日後に再生像が出てくることは珍しくありません。
シンプルに考えると
貧血でまず考えるのは2つだけです。
- 失われた
- 壊れた
- 作れない
- 作ろうとしている
- 作れていない
この2つを組み合わせることで、
原因を順序立てて考えていくことが
診断につながります。
まとめ
- 貧血は重要なサイン
- 原因は出血、溶血、作れないの3種類
- 体が作ろうとしているかどうかが大切
よくある質問
- 貧血と言われたら命に関わりますか?
-
必ずしもそうではありません。
進行スピードや重症度で緊急性は変わります。
急激な貧血は危険ですが、
ゆっくり進む場合は体が適応していることもあります。
- 歯ぐきが白ければ必ず貧血ですか?
-
見た目だけでは判断できません。
脱水やショックなど他の理由でも白く見えることがあります。
貧血の確定には採血が必要です。
- 採血だけで原因まで分かりますか?
-
貧血の有無は採血で分かります。
ただし原因特定には追加検査が必要です。
再生像の確認が最初の分岐点になります。
- 再生像とは何ですか?
-
赤血球を増やそうとする体の反応です。
骨髄がしっかり働いているかを見る指標です。
原因を考える上でとても大切です。
- 再生性貧血と非再生性貧血の違いは?
-
赤血球を作ろうとしているかどうかです。
作っている → 再生性
作れていない → 非再生性原因の考え方が大きく変わります。
- 非再生性貧血と再生不良性貧血は同じですか?
-
同じではありません。
非再生性貧血
=作れていない状態全体再生不良性貧血
=骨髄が強く障害された特定の病気
- 貧血は自然に治ることもありますか?
-
原因によります。
一過性なら回復することもありますが、
進行する場合もあります。
必ず主治医と経過を確認しましょう。
今できる最高の選択を。
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※この記事が、飼い主さんと動物たちの
安心につながればうれしいです。
ただ、体調や治療の判断はその子ごとに違います。
実際の方針については、
必ず主治医の先生の意見を大切にしてくださいね。
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