愛犬・愛猫の腎臓病ステージ:今の「現在地」を正しく知るガイド
動物病院で「腎臓病です」と言われたとき、
多くの飼い主さんが最初に聞く言葉が 「ステージ」 です。
- いまはどの段階なのか
- もう手遅れなのか
- これから何をすればいいのか
不安が一気に押し寄せる瞬間でもあります。
この記事は、治療方針を決めるための結論を出す記事ではありません。
愛犬・愛猫が「いま、どのあたりに立っているのか」
獣医師と同じ地図で整理するための記事です。
腎臓病のステージは「今の状態を整理するための分類」
数値は未来を決めるものではなく、現時点の目安
ステージ(1〜4)は機能の残存量、サブステージは悪化の速さを示します
ステージだけで治療やフードが自動的に決まることはない
正確なステージを知ることが、愛犬・愛猫を守る 最適なケアの第一歩
まずは「慢性腎臓病」かどうかを診断
血液検査で一度数値が高いだけでは「慢性」とは呼びません。
慢性腎臓病とは、
- 異常が一時的ではなく
- 時間をかけて持続的に確認される状態
代表的な判断材料には、以下があります。
血液中のSDMAが持続的に 14μg/dL を超えている
エコーやレントゲンで腎臓に明らかな異常がある
尿にタンパクが漏れ続けている(腎性蛋白尿)
尿の比重が低い(薄いおしっこしか作れない)
ステージを決める(血液検査の読み方)
診断後は血液中の「クレアチニン(CRE)」または「SDMA」の値でステージ1〜4に分けます。
※IRIS 2023最新版基準
腎臓は 予備能力が非常に高い臓器 です。
そのため、血液検査に異常が出る頃にはかなり無理をして働いている状態であることが多い、という特徴があります。
これは「もう遅い」という意味ではなく、静かに進行する病気であるという性質を示しています。
腎機能残存率と異常が出るタイミング
猫ちゃんのステージ分類
| ステージ | クレアチニン (mg/dL) | SDMA (μg/dL) | 状態の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 (予備軍) | 1.6 未満 | 18 未満 | 血液は正常範囲内。尿異常や画像異常のみ。 |
| 2 (軽度) | 1.6 〜 2.8 | 18 〜 25 | 多飲多尿が目立つ。食事療法の開始時期。 |
| 3 (中等度) | 2.9 〜 5.0 | 26 〜 38 | 貧血や嘔吐などの臨床症状が出始める。 |
| 4 (重度) | 5.0 超 | 38 超 | 深刻な尿毒症。生命維持のための集中ケアが必要。 |
ワンちゃんのステージ分類
| ステージ | クレアチニン (mg/dL) | SDMA (μg/dL) | 状態の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1.4 未満 | 18 未満 | 血液異常なし。画像や蛋白尿でのみ発見。 |
| 2 | 1.4 〜 2.8 | 18 〜 35 | 高窒素血症が軽度に認められる。 |
| 3 | 2.9 〜 5.0 | 36 〜 54 | 全身的な臨床症状が現れ始める。 |
| 4 | 5.0 超 | 54 超 | 重篤な尿毒症リスクが非常に高い。 |
【状況】 腎臓はまだしっかり働いていますが、静かな変化が始まっている段階。「治療」よりも気づけたこと自体が大きな意味を持ちます。
【状況】 残った機能でなんとか体を維持していますが、機能の約66%以上が消失。 おしっこを濃くする力が落ち、「多飲多尿」がはっきり現れるターニングポイントです。
【状況】 老廃物の排泄が追いつかなくなり、機能の約75%以上が消失。 食欲不振や嘔吐など、体に影響が出やすくなります。ただし適切な管理で 長く安定する子も少なくありません。
【状況】 「末期」という言葉が使われることもありますが、ケアの目的は「諦めること」ではありません。いちばん楽に過ごせる時間を守ることが中心になります。
増悪因子を知る(サブステージ)
ステージが決まったら、次に「何が腎臓に負担をかけているか」を調べます。
悪化速度に関わるため非常に重要な指標です。
蛋白尿 (UPC)
尿にタンパクが漏れていると、腎臓の破壊が加速します。
・非蛋白尿:< 0.2
・境界的蛋白尿:0.2 〜 0.4 (猫) / 0.5 (犬)
・蛋白尿:それ以上 → 要治療!
血圧 (収縮期)
高い血圧は、腎臓のフィルター(糸球体)を物理的に壊します。
・正常圧:< 140 mmHg
・前高血圧:140 〜 159 mmHg
・高血圧:160 〜 179 mmHg → 要注意
・重度高血圧:180 mmHg 以上 → 臓器障害リスク高
推奨される治療のロードマップ
腎臓病の治療は、「元に戻す」ことよりも「進行を遅らせる」「生活の質を守る」 ことが目的です。
- ステージ 1: 原因の特定、腎毒性のある薬の回避、新鮮な水の確保。
- ステージ 2: 負担軽減、食事や生活環境の調整
- ステージ 3: 症状緩和(脱水への皮下補液など)、合併症の管理(貧血や消化器症状など)
- ステージ 4: QOLを最優先した集中ケア
フードについての大切な考え方
腎臓療法食は 選択肢の一つ です。
ただし、「食べないフード」「体重が維持できないフード」は、どんなに理論的に正しくても意味がありません。
ステージだけでフードを決めることはできないという点は、ぜひ覚えておいてください。
またこちらで腎臓の療法食に必ず外せない良質なタンパク質とは?をまとめています。

- ステージは「今の現在地」を知るためのもの
- 数値は未来を決める判決ではない
- 大切なのは、
- 進行速度
- 生活の質(QOL)
- その子らしさ
腎臓病と向き合うことは、「正解を探すこと」ではありません。
獣医師と一緒に、その子にとっての最適解を探していくプロセス です。
- 腎臓病のステージは一度決まったら変わらないのですか?
-
いいえ、変わることがあります。
ステージは「今の状態」を示すもので、治療や管理によって数値が改善・安定することもあります。
ただし、腎臓の組織自体が元に戻るわけではないため、「治った」という意味ではありません。
- ステージが高い=もう手遅れ、ということですか?
-
いいえ、そうではありません。
ステージ3や4でも、適切な管理によって長期間安定して生活できる子は多くいます。
重要なのは「何ステージか」よりも、- 症状がどれくらい出ているか
- 進行スピードは速いか遅いか です。
- ステージ1や2でも治療は必要ですか?
-
「治療」よりも「管理」が中心です。
この段階では、
- 定期的な検査
- 食事や生活環境の見直し
- 増悪因子(尿タンパク・高血圧)のチェック が重要になります。 早期に気づけたこと自体が、大きなメリットです。
- 腎臓病と診断されたら、すぐに腎臓療法食に変えるべきですか?
-
必ずしもそうではありません。
腎臓療法食は有効な選択肢ですが、
- 食べない
- 体重が落ちる 場合は逆効果になることもあります。 ステージ・年齢・体調・嗜好性を考慮し、獣医師と相談しながら決めることが大切です。
- 食事だけで腎臓病の進行を止められますか?
-
進行を遅らせることはできますが、止めることはできません。
腎臓病は進行性の病気ですが、
- 食事
- 水分摂取
- 血圧や尿タンパクの管理 を組み合わせることで、生活の質を保つ期間を大きく伸ばすことができます。
- 数値が悪いのに元気そうですが、本当に重い病気ですか?
-
腎臓病は「元気そうに見える期間が長い病気」です。
症状が出る頃には、すでに腎機能が大きく低下していることも少なくありません。
「元気=大丈夫」ではなく、
元気なうちに管理を始めることが最も重要 です。
- SDMAとクレアチニン、どちらを重視すべきですか?
-
どちらも重要ですが、役割が違います。
- SDMA:より早期の変化を捉えやすい
- クレアチニン:体の状態と合わせて評価する指標
単独で判断せず、尿検査や身体状態とセットで評価します。
※乖離しすぎる場合は少し期間を空け再検査を行い、より高いステージを採用することが多いです。
- 犬と猫で腎臓病の考え方は違いますか?
-
基本的な考え方は同じですが、進行の仕方や管理の重点は異なります。
猫は慢性腎臓病が非常に多く、長期管理が前提になります。
犬では高血圧や蛋白尿の影響が強いケースも多く、個別対応が重要です。
- 点滴はいつから必要になりますか?
-
ステージではなく、症状と状態で判断します。
- 食欲低下
- 脱水
- 嘔吐 などがあれば、早い段階でも検討されます。 「ステージ3だから必ず点滴」ではありません。
- 家庭でできることは何がありますか?
-
以下はすべて、腎臓を守る大切な行動です。
- 水をしっかり飲める環境づくり
- 尿量・飲水量の変化に気づく
- 定期検査を継続する
- 食べている量・体重を把握する
おうちでの観察は、治療と同じくらい重要です。
尿量の変化を「見える化」して早期発見
血液検査に異常が出る前に、「尿量の増加」をキャッチしましょう。
システムトイレの下に敷くシートの重さや、砂の固まりの大きさをチェックすることが、猫ちゃんの寿命を延ばす鍵になります。よく聞かれるので
尿量・回数をスマホで自動測定。再診モニタリングツールを見る
- 腎臓病と診断されました。まず何を質問すればいいですか?
-
- 今のステージと、その根拠
- 進行を早めている要因はあるか(尿タンパク・血圧など)
- 今いちばん優先すべき管理ポイントは何か
今できる最高の選択を。
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